【めぐりの手帖】霜始降——体の初霜を、記録する

めぐりの手帖

霜始降——しも、はじめてふる。霜降 [1] の初候です。朝、地面や屋根がうっすら白くなる、初霜の便りが届きはじめる頃。

暦は「初」が好きです。初霜、初雪、初氷。気象台はいまも初霜の日を記録していて、その日、その土地の季節のページが一枚めくられたことになります。

面白いのは、体にも「初」があることです。今年はじめて、湯船が恋しかった夜。今年はじめて、靴下を履いたまま眠った夜。今年はじめて、洗面の水を冷たいと感じた朝。どれも小さな初霜です。ただ、誰も記録しないから、気づかれないまま流れていきます。

施術室では十月ごろから、「そういえば最近」という言い出しが増えます。そういえば最近、足が冷える。そういえば最近、朝が起きづらい。体の初霜は、たいてい「そういえば」の形で、あとから見つかるのです。

気象台の初霜には、条件がひとつあります。誰かがちゃんと、その朝の地面を見ていること。観測は、見る人がいて初めて成立します。そして体の観測者は、あなたしかいません。

初霜が降りると、農家は冬支度を始めます。記録は、身構えるためのものではなく、支度の合図として使うもの。体の初霜も、同じ使い方でいいはずです。

わたしは今年から、手帳の隅に体の初霜を書きつけることにしました。初・湯たんぽ。初・生姜。書くといっても、一行です。日付と、三文字か四文字。去年より早いか遅いか、来年のあなたが読み比べられます。小さな白い記録が増えていくのも、そう悪くない眺めです。

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