金曜の夜にお届けする、短い眠りのQ&Aです。今夜は、秋の夜長にときどき聞かれる、少し怖い質問から。
Q. 夜中に金縛りにあって、体が動きませんでした。何かの霊のしわざでしょうか。少し怖くて、眠るのが不安です。
A. 怖い思いをされましたね。でも、安心してください。金縛りは霊のしわざではありません。体が眠っているあいだに、意識だけがひと足先に目を覚ました——ただそれだけの、誰にでも起こる現象です。
目は覚めているのに、体だけが動かない。胸のあたりが重く、そばに誰かがいる気配までする。あの数十秒の心細さは、思い出すだけで胸がざわつきますね。まずは、その正体からお話しします。
夢のあいだ、体にはそっと鍵がかかっている
夢を見る眠り(レム睡眠)のあいだ、体は力が抜けて、動かせない状態になっています。これは、夢の中の動きをそのまま演じて、寝床で暴れてしまわないための仕組み。いわば、体にそっと鍵がかかっている時間なのです。
ふだんは、目が覚めるのと、この鍵が開くのが同時に起こります。ところが疲れや寝不足でリズムがゆらぐと、意識だけが先に目覚めて、鍵はまだ閉じたまま、ということが起こります。それが金縛り。動けないのは当たり前で、体はまだ、眠りの中にいるのです。
胸の重みや、誰かがいる気配は、脳が見ている夢の続き。半分目覚めた意識が、それを「本当にいる」と感じてしまうだけ。怖い感じがするのは、夢見の時間に、脳の中の不安を扱う場所が活発になりやすいからだといわれています。
鍼灸師の豆知識:世界じゅうに、金縛りの言い伝えがあります
この体験は日本だけのものではありません。海外にも「魔女が胸に乗る」といった言い伝えが、古くから各地に残っています。昔の人も同じ体験をして、それぞれの物語にしてきたのです。
つまり金縛りは、あなたひとりを狙う怪異ではなく、大昔から人が繰り返し味わってきた、体のありふれた癖。名前がいくつもついているほど、ありふれたものなのです。
数十秒で、鍵はちゃんと開きます
知っておいてほしいのは、金縛りは数十秒から数分で、自然にほどけるということ。何もしなくても、鍵はひとりでに開きます。焦って抜け出そうとするより、「またこれか、じきに解ける」と待つほうが、かえって早く楽になります。
起こりやすいのは、寝不足や不規則な生活が続いたときと、仰向けで眠っているとき。金縛りは、体が「少し休みが足りていないよ」と、そっと知らせてくれているサインでもあります。生活のリズムを整え、横向きで眠ると、ぐんと出会いにくくなります。
もし今夜また訪れても、大丈夫。怖くて動きたくなったら、指先やつま先だけ、そっと動かそうとしてみてください。末端のほうから、鍵は少しずつほどけていきます。
仰向けが続きがちな方は、朝スッキリ起きられない原因は『夜間の寝返り』にあり?東洋医学的アプローチもあわせてどうぞ。秋の夜長は、怖い話が似合う季節。でも金縛りだけは、どうか怖がらずに。


