金曜の夜にお届けする、短い眠りのQ&Aです。今夜は、まじめな方ほど苦しくなる、この思い込みについて。
Q. 8時間眠らなきゃと思って早めに布団に入るのですが、そういう夜ほど寝つけません。どうしたらいいでしょう。
A. その「8時間」を、いったん下ろしてみませんか。じつは、長く横になるほど眠りは薄まっていきます。まじめに守ろうとするほど遠のく——眠りには、そういう気むずかしさがあるのです。
まだ眠くもないのに、時間だからと布団へ。天井を見ながら「早く寝ないと」と焦って、気づけば1時間。あの、努力が空回りする夜。理由は、眠りの「濃さ」にあります。
眠りは、薄めると味がぼやける
その日に必要な眠りの量は、体がすでに決めています。そのぶんを、長い時間に引き延ばして注ぐと、眠りは水で薄めた出汁のように、味の薄いものになる。寝つけない時間、何度も目が覚める時間が増えていくのは、そのためです。
不眠のケアの現場でも、あえて布団にいる時間を短くすることで、眠りが濃くなっていくという考え方が使われています [1] 。長く寝床にいることは、必ずしも長く眠ることではないのです。
そもそも「8時間」という数字には、思われているほどの根拠がありません。必要な時間は年齢とともに自然に短くなり、大人ではおおむね6〜8時間が目安とされています。数字を守れないことは、失敗ではありません。
鍼灸師の豆知識:古典は「寝すぎ」も戒めています
『黄帝内経』 [2] には、体を損なう五つの行きすぎが挙げられていて、そのひとつが「久しく臥すれば気を傷る」——長く横になりすぎると、気が傷むという一節です。
休むことは大切、けれど寝床にしがみつくことは別もの。二千年前から、眠りは長さではなく質で語られてきたのかもしれません。
ものさしを、数字から昼へ移す
まず、時間の目標を手放します。そのうえで、眠くなってから布団に入る。時計が9時でも、眠くなければ、灯りを落とした部屋でもう少し過ごしていい。布団は「眠るための場所」だと、体に覚えていてもらうためです。
足りているかどうかは、時間ではなく昼のあなたが教えてくれます。日中ひどく眠くならず、体が動くなら、それがあなたに合った量。6時間半でも、7時間でも、正解です。
今週ためすなら、枕元で「何時間眠れたか」を数えるのをやめてみてください。数えるものがなくなると、夜はただの夜に戻ります。
眠ったのに疲れが残る感じが続く方は、寝ても疲れが取れない原因と今日からできる対策もあわせてどうぞ。眠りは、点数をつけられるのが苦手なようです。


