金曜の夜にお届けする、短い眠りのQ&Aです。今夜は、空を見上げたくなる季節の、こんな質問から。
Q. 満月の夜は、眠れない気がします。気のせいでしょうか?
A. 気のせいとは、言い切れません。じつは「月が見えない部屋」でも眠りが浅くなった、という研究があります。あなたの感覚は、案外正しいのかもしれません。
満月の夜、理由もなく目が冴えて、カーテンの隙間の月をつい確かめてしまう。あの、なんとなく落ち着かない感じ。その正体を、少し探ってみます。
「明るいから」だけでは、説明がつかない
満月というと、月あかりが明るいから眠れない、と思われがちです。もちろん光の影響もあります。でも、話はそれだけではないようなのです。
スイスの大学が行った実験では、月がまったく見えない部屋で眠っても、満月の前後は深い眠りに関わる脳の働きが約30%下がったと報告されています。入眠までの時間は少し延び、眠りを促すホルモンの分泌も減っていました。
光が届かないのに変化が起きた——ここが興味深いところです。研究者は、私たちの体の中に、月の満ち欠けと歩調を合わせる時計のようなものがあるのかもしれない、と考えています。海の潮が月に引かれるように、体の内側も静かに引かれている、というわけです。
鍼灸師の豆知識:二千年前の医学書も、月と体を結んでいました
東洋医学の古典『黄帝内経(こうていだいけい)』には、月が満ちるときは体の血や気も満ち、月が欠けるときはそれもうすくなる、という趣旨の一節があります。
潮の満ち引きと同じものさしで、人の体の巡りをとらえていたのです。満月の夜のざわめきは、最新の研究を待つまでもなく、ずっと昔から知られていた体の癖だったのかもしれません。
だから、満月の夜は責めなくていい
この話には、ひとつ安心できる面があります。満月の夜に寝つけなくても、それはあなたの心が弱いからでも、生活が乱れているからでもない、ということ。ひと月にほんの数日、体が月に少し引かれているだけなのです。
できることは、ふたつだけ。光の分は、遮光カーテンやアイマスクで減らせます。そのうえで、それでも冴える夜は、無理に追いかけないこと。眠れないなら、いっそ窓辺で月を眺めてしまうのも、この季節らしい過ごし方です。
もうすぐ十五夜。月がいちばん美しい頃です。眠れない満月の夜は、「今夜は月に付き合う日」と決めてしまう——そう思えると、冴えた目も、少しだけ楽になります。
頭に気がのぼって寝つけない感覚が続く方は、ストレスで脳がのぼせて眠れない夜に。気を落ち着かせる睡眠セルフケアもあわせてどうぞ。今夜の月が、やさしい眠りを連れてきてくれますように。


