【めぐるのお灸教室】第6回 眠りの本丸「神門」は、こころの通用門

鍼灸師の養生コラム

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「お灸って、眠りのツボにはいつ着くんですか」——連載の途中、施術室でそう聞かれたことがあります。

ごもっともです。火の扱いから始めて、合谷、三陰交、照海と歩いてきたこの教室、実はまだ「眠りの本丸」を据えていませんでした。

少し間があきましたが、お灸教室、再開です。第6回はいよいよ、安眠のツボの代表格——神門(しんもん)を据えます。

初めての方は、火の扱いをまとめた第1回を先に読んでいただくと安心です。道具がすでに手元にある方は、このままどうぞ。

「神門」——名前が、そのまま眠りの定義になっている

神門は、手首にあるツボです。据え方の前に、この名前を少しだけ解剖させてください。ここに、東洋医学の眠りの考え方が丸ごと入っているからです。

東洋医学では、精神や意識のことを「神(しん)」と呼びます。神さまの神ではなく、こころの働きそのもののこと。そしてこの神は、日中は外の世界へ出て働き、夜になると体へ帰ってきて休む、と考えられてきました。

眠れない夜とは、神がうまく家に帰れていない夜。そして神門の「門」は、出入り口の門です。つまり神門とは、こころの通用門。帰りそびれている神のために、門のあたりを温めて「こちらですよ」と灯りをともす——神門のお灸は、そういう絵になります。

ちなみに神門は、心経 [1] の原穴 [2] ——つまり、こころの経絡の中心穴でもあります。ツボの名前が、そのまま眠りの定義になっている。本丸と呼びたくなる理由です。

準備するもの(いつもの4点です)

  • 台座付きのお灸。初めての方はいちばんやわらかい温度のものを。
  • ライターまたは着火棒。火が横向きに出るタイプより、先端から出るものが扱いやすいです。
  • 水を張った小皿や灰皿。使い終わりの完全消火用。必ず火をつける前に用意します。
  • ペン。見つけたツボに軽く印をつけておくと、火をつけてから慌てません。

お灸そのものは、煙の出ないタイプと、香りを楽しむタイプの2択です。好みで選んでください。

神門の見つけ方と、据え方5ステップ

まず、場所から。手のひらを上に向けて、手首のしわを見ます。その小指側の端に、コリッとした小さな骨(豆状骨)があります。神門は、その骨のすぐ内側——骨と腱のあいだの、小さなくぼみです。

教科書の位置はここですが、この教室の方針はいつも通り。指で押してみて、じんわり心地よく響く場所を優先してください。くぼみを親指の先で軽く探ると、「ここだ」という一点が見つかります。

  1. ツボに印をつける。ペンで小さな点をひとつ。火をつけてから探さないための保険です。
  2. シールを剥がして、指先に貼る。お灸は、まだツボに置きません。利き手の人差し指の先で待機させます。
  3. 先端に火をつける。もぐさの先が赤くなれば十分。炎を上げる必要はありません。
  4. 印の上へ、そっと貼る。腕を机や膝に置いて安定させてから。手首は皮膚の薄い場所なので、熱さのサインには早めに応じます。
  5. 心地よい温かさのうちに外す。ピリッと来たら我慢せず、台座をつまんで水の皿へ。完全に消えたのを確かめて終了です。

いつ据えるか

この教室の答えはいつも同じで、あなたが続けやすい時間がいちばんです。夕食の後の一服でも、寝る少し前でも、朝のコーヒーの隣でも構いません。

ひとつだけ例外があって、お風呂の前後1時間は避けてください。入浴後の皮膚はやわらかく、火傷をしやすいためです。

安全のためのお約束(毎回同じ7つ+今回のひとこと)

①熱さを我慢しない(ピリッと来たらすぐ外す)②同じ場所に続けて据えない③顔・粘膜・湿疹や傷のある場所には使わない④妊娠中の方、糖尿病などで感覚が鈍くなっている方、飲酒時・発熱時は自己判断せず、事前に専門家へ相談を⑤換気をして、使用後は水で完全に消火⑥お風呂上がりは皮膚がやわらかく火傷しやすいため避ける(入浴前後1時間空ける)⑦終わったあとにだるさやのぼせ(灸あたり)が出たら、その日は休む。——神門は手首のしわの近く、皮膚の薄い場所です。しわの真上を避けて、くぼみに据えてください。

よくあるつまずき

Q. 利き手側の手首に据えるとき、反対の手がぎこちなくて怖いです。

A. 無理に両方やらなくて大丈夫です。まずは利き手で扱える側——右利きなら左手首だけで十分。慣れてきたら、腕を机にしっかり預けて、逆の手でゆっくり。片側だけでも、門はちゃんと開きます。

今週の宿題は、火を使いません

宿題はひとつだけ。今夜、布団の中で神門のくぼみを親指で探しておくこと。押して心地よい一点が見つかれば、それが次にお灸を据える場所です。場所さえ決まっていれば、火をつける日はいつでも来ます。

火の扱いに不安が残る方は、【巡のお灸教室】第1回 最初のお灸は、ツボを狙わなくていいで復習を。それでは、また次回の教室で。こんどは、冷えはじめる季節の足元の話をしましょう。

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