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前回の宿題、両足の三陰交は見つかりましたか。左右で響きが違った方も、よく分からなかった方も、指で探したこと自体が今日の下ごしらえになっています。
今回はそこから、指をすっと下へ。内くるぶしのすぐ下に、もうひとつの眠りのツボがあります。
名前は照海(しょうかい)。海を照らす、と書きます。きれいな名前ですが、このツボの面白さは名前だけではありません。
東洋医学には「まぶたを閉じる脈」がある
眠りは、どこから始まるでしょう。呼吸が深くなる、手足が温かくなる——いろいろありますが、いちばん目に見えるのは、まぶたが下りることです。
東洋医学の古い体の地図には、このまぶたの開け閉めを受け持つ、一対の脈が描かれています。陽蹻脈(ようきょうみゃく)と陰蹻脈(いんきょうみゃく)。昼は陽蹻の側が満ちて目がぱっちり開き、夜になると陰蹻の側が満ちて、まぶたが自然に下りてくる——そう考えられてきました。
カーテンにたとえるなら、朝に開ける紐と、夜に引く紐が別々にある、ということ。眠れない夜は、閉じる側の紐がうまく引けていない夜です。
そして照海は、この「閉じる紐」——陰蹻脈への入り口にあたるツボとされてきました。まぶたから一番遠い足首に、まぶたを閉じるためのツボがある。体とは、面白いものです。
海を照らす——熱をしずめる水のツボ
もう一歩だけ、奥へ。照海は腎の経絡の上にあります。東洋医学で腎は、体の水をたたえる「海」のような場所。照海という名前は、その深い海に光をあてて呼び覚ます、という意味を持っています。
夜、布団の中で顔だけ熱く、頭が冴えて、足元は冷たい——そんな夜はありませんか。東洋医学では、体をしずめる水が足りないと、火が抑えを失って上へのぼる、と考えます。やかんの水が減ると、空焚きで熱ばかり立つのと同じ理屈です。
照海は、その減った水を呼び戻す側のツボ。のぼった熱を力ずくで消すのではなく、下から水位を上げて、火を静める。頭が冴えて眠れないタイプの方に、昔から選ばれてきた理由です。
お灸は、前回と同じ二択で
使うお灸は、これまでと同じ台座つきのもので大丈夫。煙の出ないタイプと香りつきのタイプ、お好みで選んでください。
指で聞いて、照海を見つける
探し方は、もう身についてきたあの手順です。
- 内くるぶしのてっぺんに、親指をあてる。そこから親指1本分、まっすぐ下へ。かかと側でもつま先側でもなく、真下です。
- 骨のふちの、やわらかいくぼみを探す。くるぶしの骨のすぐ下は、少しへこんで指が沈む場所があります。骨の上に乗ってしまったら、少しだけ下へ。
- ゆっくり押して、体の返事を聞く。じんと奥へ響く、だるい、痛気持ちいい。返事のある一点が、今日のあなたの照海です。前回の三陰交より、少し繊細な響き方をする方が多いところです。
三陰交が「内くるぶしから指4本上」、照海が「指1本下」。くるぶしを挟んで上下にひとつずつ、と覚えると忘れません。
据え方と、ひとつだけの注意
据え方はいつも通り。印をつけ、シールを剥がして貼り、火をつける。片足1個ずつ、左右で終わりです。くるぶし周りは皮膚が薄く、骨がすぐ下にあるぶん熱が届きやすい場所。チリッときたら、迷わずはがしてください。
時間は、あなたが続けやすい時間で。お風呂の前後1時間だけは空けます。
お灸の前に、必ず読んでほしい安全のこと
1. 熱さを我慢しない。チリッときたらすぐはがす。熱いほど効くわけではありません。
2. 同じ場所に、続けて何個も据えない。皮膚を休ませながら行います。
3. 顔・粘膜・湿疹・傷のある場所には使わない。
4. 妊娠中の方、糖尿病などで感覚が鈍い方、飲酒後、発熱時は、自己判断せず事前に専門家へご相談を。
5. 換気をして、使い終わりは水で完全に消火する。
6. お風呂上がりすぐは避ける(入浴の前後1時間を空ける)。皮膚がやわらかく、やけどしやすいためです。
7. お灸のあと、だるさやのぼせを感じることがあります(灸あたり)。その日は無理をせず、水分をとって休んでください。
よくあるつまずき
Q. 三陰交と照海、両方やったほうがいいですか?
A. 両方でなくて大丈夫です。その日、指で押して響きの強かったほうをひとつ選んでください。体の返事が大きい場所が、その日いちばん求められている場所。毎晩ぜんぶ据えようとすると義務になって続きません。ひとつで十分です。
今夜の宿題
宿題はひとつだけ。布団に入る前に、三陰交と照海を両方指で押して、響きを比べてみること。今日はどちらが大きく返事をするか。それが分かれば、据える場所はもう決まったも同然です。
頭だけが熱くて眠れない夜が続く方は、ストレスで脳がのぼせて眠れない夜に。気を落ち着かせる睡眠セルフケアもあわせてどうぞ。
次回は少し趣を変えて、これまでの三回をふり返りながら、お灸を「続けるコツ」の話をします。指で聞く練習、今夜もどうぞ。


