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夕方、靴下を脱いだら、足首にゴムの跡がくっきり食い込んでいた。朝はすんなり履けたはずなのに——秋が深まるこの時季、そんな場面に覚えのある方は多いはずです。
足首を指で押すと、へこみがしばらく戻らない。デスクワークの日ほど、その跡は深くなります。冷えの季節は、実は「水がとどこおる季節」でもあります。
お灸教室・第9回は、その水の話。前回の然谷から少しだけ上にのぼった場所にある、復溜(ふくりゅう)を据えます。
「復溜」——帰ってきて、たまる水
復溜の「復」は、帰る・ふたたび。「溜」は、たまる・とどまる。名前を読み下すと、流れが帰ってきて、ふたたびたまる場所となります。
行きっぱなしだった水が、ここでいったん戻ってくる——昔の人は、足首のこの一点を、水の流れの中継地点のように見ていたわけです。実際この穴は、むくみや汗のバランスといった「体の水まわり」に、古くから使われてきました。
面白いのは、前回の然谷と同じ腎 [1] の経絡の上にあること。東洋医学の腎は、体を温める「火」と、水を巡らせる「水」の、両方の元締めです。焚き口の然谷、水路の復溜。ひとつの流れの上に、火の穴と水の穴が並んでいる。腎という臓の顔の広さが、この二穴によく表れています。
だから冷えとむくみがセットで来る方——足は冷たいのに、夕方はぱんぱん——には、この並びごと覚えていただくと、道具箱がぐっと使いやすくなります。
準備するもの
いつもの4点。台座付きのお灸、ライター、水を張った小皿、印つけ用のペンです。火の扱いは第1回を。お灸は、香りを楽しみたい方はこちらの「はじめてのお灸」も選べます。煙の出ないタイプ(長生灸)との2択の考え方は第6回のとおりです。
復溜の見つけ方と、据え方のコツ
目印は、使い慣れたあの場所から。内くるぶしとアキレス腱のあいだのくぼみ——ここには太渓 [2] というツボがあります。復溜は、そこから指3本ぶん、まっすぐ上。アキレス腱の前のきわです。
例によって、仕上げは指で。上下に少しずらしながら押してみて、じんわり響く一点があなたの復溜です。むくみのある日は、押した跡が浅く残ることもあります。
- 横座りか、椅子で足首を膝に乗せる。足の内側が上を向いて安定する姿勢を先に作ります。
- 太渓のくぼみ→指3本上、の順に測って印をつける。毎回同じ順番で測ると、手が場所を覚えます。
- シールを指先に貼り、火をつける。先が赤くなれば十分。
- アキレス腱のきわの、平らな面を選んで貼る。腱の真上は細くて台座が傾きやすい場所。少し前側の、皮膚が平らなところに落ち着けます。
- 心地よいうちに外す。足首まわりは皮膚が薄く、熱さが早く来ます。ピリッと来たら我慢せず水の皿へ。
いつ据えるか
時間はあなたが続けやすいときで。お風呂の前後1時間、食事の前後30分は避けてください。夕方のむくみが気になる方は、帰宅して一息ついた頃をひとつの候補に。
安全のためのお約束(毎回同じ8つ+今回のひとこと)
①熱さを我慢しない(ピリッと来たらすぐ外す)②同じ場所に続けて据えない③顔・粘膜・湿疹や傷のある場所には使わない④妊娠中の方、糖尿病などで感覚が鈍くなっている方、飲酒時・発熱時は自己判断せず、事前に専門家へ相談を⑤換気をして、使用後は水で完全に消火⑥お風呂上がりは皮膚がやわらかく火傷しやすいため避ける(入浴前後1時間空ける)⑦食事の前後30分は避ける(消化のために血流が集まる時間のため)⑧終わったあとにだるさやのぼせ(灸あたり)が出たら、その日は休む。——足首まわりは皮膚が薄く、熱さを感じやすい場所です。また、片方の足だけが急に強くむくむ・痛みや赤みを伴う場合は、お灸で様子を見ず、早めに医療機関へご相談ください。
よくあるつまずき
Q. 太渓と復溜、近すぎてどちらに据えているのか分からなくなります。
A. 厳密に分けようとしなくて大丈夫です。くぼみの中なら太渓、そこから指3本上なら復溜——まずこの大づかみで十分。迷ったら、いつもの方針で押し比べて、今夜響くほうへ。同じ腎の流れの上にある隣同士ですから、真面目に悩むより、続くことのほうがずっと大事です。
今週の宿題
宿題はひとつ。朝と夕方、足首のいちばん細いところを指でひと回り触って、太さの違いを覚えておくこと。数字で測らなくて構いません。指の感覚に「昼のあいだに増えた水」を教えてもらう——それが、復溜を使う日を決める物差しになります。
前回の然谷は第7回でどうぞ。次回は、ツボから少し離れて——旅先や実家など、いつもと違う場所でのお灸の話をします。


