「最初のお灸は、ツボを狙わなくていい」——8月の第1回は、この一言から始まりました。
あれから13週。火の扱いを覚え、手と足に7つの経穴 [1] を持ち、選び方とつまずきの直し方まで歩いてきました。今夜が、お灸教室の最終回です。
卒業式らしく、まとめの話と、贈る言葉をひとつずつ。それから、次の教室の案内もあります。
13回ぶんの道具箱、最終確認
まず、あなたの道具箱の中身を、指差し確認しておきましょう。
- 合谷(手の甲)——迷ったらここ。頭まわりと、なんとなくの不調の万能口。
- 三陰交(内くるぶしの上)——冷えと巡り。※妊娠中は避けてください。
- 照海(内くるぶしの下)——まぶたを閉じる脈。目が冴える夜に。
- 神門(手首の小指側)——こころの通用門。考えごとの夜に。
- 然谷(足の内側)——燃える谷。足が冷えて顔がほてる日に。
- 復溜(足首の上)——帰ってきて、たまる水。夕方のむくみに。
- 陰陵泉(膝の内側の下)——丘のふもとの泉。雨の日の重だるさに。
7つもあれば、秋冬の夜はだいたい間に合います。そして思い出してください。ぜんぶ使わなくていいのでした。今夜の一穴を、押し比べて選ぶ。それがこの教室の背骨です。
「灸は百日」——卒業してからが、本番
お灸の世界には、「灸は百日」という古い言い方があります。効き目はすぐの日もあれば、ゆっくりの日もある。だからまず百日、気長に付き合ってごらんなさい——そういう、時間の物差しです。
第1回から今夜まで、ちょうど84日。つまりこの教室の13週間は、百日のまだ入り口です。ここから先の続きは、教室ではなく、あなたの暮らしの中で焚かれていきます。卒業してからが、本番というわけです。
とはいえ、身構えなくて大丈夫。続け方の約束は、これまでと変わりません。週に2〜3回で十分。肌に赤みが残る日は休む。つまずいたら第12回に戻る。休んだ期間は「やめた」ではなく「休んでいた」。
そして、この教室の卒業条件は、7穴を暗記したことではありません。迷った夜に、戻る場所ができたこと。それだけで、もう十分に卒業です。
体の声を聞く練習は、もう始まっている
13回を通じて、みなさんは知らないうちに、ひとつの練習を積んでいます。押して冷たい側を探す。響く一点を選ぶ。肌の色で休みを決める。——ぜんぶ、体の声を聞く練習です。
東洋医学には未病 [2] という言葉があります。病気になる前の、小さな揺らぎの段階。お灸の習慣のほんとうの値打ちは、ツボを温めること以上に、この揺らぎに自分で気づける耳が育つことだと、わたしは思っています。
もし揺らぎを超えて、痛みや不調が続くときは、迷わず医療機関へ。そして、取穴を一度プロの手で確かめたくなったら、お近くの鍼灸院の扉を叩くのも、立派な卒業後の選択肢です。
安全のためのお約束(この教室の置き土産・8つの最終版です)
①熱さを我慢しない(ピリッと来たらすぐ外す)②同じ場所に続けて据えない③顔・粘膜・湿疹や傷のある場所には使わない④妊娠中の方、糖尿病などで感覚が鈍くなっている方、飲酒時・発熱時は自己判断せず、事前に専門家へ相談を⑤換気をして、使用後は水で完全に消火⑥お風呂上がりは皮膚がやわらかく火傷しやすいため避ける(入浴前後1時間空ける)⑦食事の前後30分は避ける(消化のために血流が集まる時間のため)⑧終わったあとにだるさやのぼせ(灸あたり)が出たら、その日は休む。
よくあるつまずき(最後のQ&A)
Q. 教室が終わったら、分からないことはどこに聞けばいいですか。
A. まず、全13回があなたの参考書としてここに残ります。火のことは第1回、選び方は第8回、つまずきは第12回。それから、体のことで心配な変化があれば医療機関へ、取穴の答え合わせがしたければ鍼灸院へ。聞ける先を複数持っておくことも、セルフケアの技術のうちです。
最後の宿題
宿題はひとつ。あなたが最初にお灸を据えた日から数えて、百日目の日付をカレンダーに書き込んでおくこと。その日が来たら、最初の夜のことを少しだけ思い出してください。火が怖かったこと。ツボが分からなかったこと。そこからの距離が、あなたの卒業証書です。
そして11月からは、香りの教室
木曜の教室は、これで終わりではありません。11月5日から、第2クール【めぐるのアロマ教室】が始まります。
季節はちょうど、乾いた空気が鼻とのどに触れる頃。東洋医学で鼻とつながる「肺」の季節に、香りの楽しみ方を最初の一歩から。第1回のタイトルは——「精油は、まだ買わなくていい」。この教室の卒業生なら、もう聞き覚えのある始め方ですね。
13週間、手を動かしてくださって、ほんとうにありがとうございました。初めての方は第1回からどうぞ。それでは、また木曜の夜に。こんどは、いい香りのする教室で。


